EPパレット
第9色 「誰がどう歌うのか」

クラシックプレーヤーのためのジャズ講座で勉強を始めて数ヶ月経ち、オペラアリ アとジャズの伴奏をやりました。

ジャンルが違うだけで随分自由にならないものだなあ・・・と実感しました(笑)

私はクラシック奏者なのでオペラや歌曲は多くやってきました。勉強する方向性がわ かるので練習もしやすいのですが、メロディ譜だけのジャズの曲に和音をつけ、アレ ンジして・・・というと思ったように手がすぐには動かないのです。

オペラとジャズでは自由の種類が全く違うのです。

自分でやってみるまで、ジャズは限りなく「好き勝手に」やってよさそうな印象をもっ ていたのですが、テンポ自体は厳密といってよいほど変わらないまま進んでいくもの で、むしろクラシック(オペラや楽器演奏全般)のほうがテンポが自由なんです。と いうか、曲を最初から最後まで同じテンポでやるということはまずありません。

そのかわり、ジャズはもとのメロディにこだわることなく和音進行にそっていればど んどん変えていってもよいし、曲の長さも、3拍子を4拍子に変えてもいいのです。

両方やってみることで、それぞれの良さを体験できて面白いなと思います。ジャズが 自由になるのはもう少し先になりそうですけど。

では、同じ部分とは・・・?

楽器演奏にくらべると声楽は「誰がどう歌うのか」という部分がより強調されるよう に思います。

言葉を使うという点で、台詞をしゃべる要素が大きいからです。

魅力的な演技をするにはすでに言葉のもっている意味をどのように解釈するべきかに 大きく関わってきます。

「メロディと伴奏。」前はそのように考えていました。間違いではないとは思います。 でも最近は「言葉と響き。」 だと思うのです。ソリストの語る「言葉」をどう理解するのかが第一で、メロディに どう合わせるかはそれほど重要ではないように思うのです。

言葉の中に響きを加えていくことで自然と声と音が一体になっていき、立体的になっ ていきます。伴奏者は決してメロディに「合わせて」いるわけではないのです。

ジャンルは違っていてもやっぱり「言葉」がいちばん先なのだなと思います。

色々な角度から「言葉」を、そして「音楽」を感じることが今は楽しいです。

2011/07/15 EP 辰巳 京子