EPパレット
第8色 「共に呼吸し、共に音楽をつくる」

上野公園の木の葉も、段々色が抜け落ちて、カサカサとした音をたてるようになりました。季節がめぐるのは早いなぁ、と、つくづく感じます。
ついこの間まで制服を着て田んぼの脇を歩いていたと思っていたのに、もうすぐ大学生活も最後の一年に入るところです。

怖い母に怒鳴られ、泣きながらピアノを弾いたり、テーマを与えられて即興演奏をして遊んだり、マーチングバンドや吹奏楽部でピアノ以外の楽器やアンサンブルに触れたり、社会や国語の先生もいいな、と思ったり…
いろんな道を通って、やっぱりスゴイ人が集まると言われる芸大というところに、なんとかして行ってみたい、そして、演奏も理論も歴史も文学も、興味のある分野をみんなまとめて勉強したい、という(ちょっと不純な)気持ちで楽理科入学に辿りつきました。

そこで入った寮の二人部屋で、同室になったのが声楽科の女の子。
歌を聞かせてもらい、その子自身が音楽であるかのような様子に惚れぼれとして、「声楽」の虜になり、それから、その子の周りにいた声楽科の同級生にもよく伴奏させてもらうようになり、学年の合唱やオペラなどにも関わらせてもらって、いつの間にか先輩や学外の方ともご一緒させていただくようになり…今に至ります。

最近までは、好きなピアノで上手なソリストさん達と共演させていただくのがとにかく嬉しく、ひたすら合わせることに徹していました。
でも、お世話になっているコレペティの先生、声楽家の先生、いつも伴奏させてくれる友達や、声楽の伴奏の道に引き込んでくれた同室の女の子…、たくさんの人たちとの関わりの中で、伴奏のあり方を見直し、改めて勉強の必要を感じています。

息遣い、歌心。音楽で人と繋がる感覚が、本当に気持ちいい。
様々な国の言葉、オーケストラの音、歌詞のストーリー、端々ににじみ出る文化が、本当に興味深い。

ピアノの技術はもちろん大事だけど、声楽の力、言葉、知識、ソルフェージュ力など、大きな土台のあるEPになりたい。
ただ合わせる影の伴奏者じゃなくて、共に呼吸し、共に素敵な音楽をつくるEPになりたい。
今までの色々な経験や楽理科での勉強は、きっと生きていく。
そんなことを思って、今までよりちょっと深く、もっと意欲的に「勉強」する冬がやってきます。


2010/11/1 EP 斎藤 優奈